作品から見るSくんの成長記録

3歳「ぼくとお母さん」

〜自立心の芽生え〜

母子一体の状態で、母親と肉体的に離れることを非常に怖がっていた時期に描かれたもの。小さな手足が出ていることから、自立心が芽生え始めていることがうかがえる。アトリエでは作りたい物を母親にねだって作らせていたが、この頃から自分の手で創作するようになっていった。


3歳「お花」

〜友だちへの興味〜

保育園に入ったばかりの4月の作品。題名は「お花」ですが、カラー帽子をかぶった子どもたちが園庭で遊んでいるようにも見えます。登園を嫌がってはいるものの、集団生活を受け入れようとする気持ちが感じられます。このような集団の表現は、入園前後の子どもによく見られます。


4歳「ぼくとお母さん」

〜体感覚への目覚め〜

3歳の「ぼくとお母さん」に比べ、ずいぶん足が伸びました。母親とも離れて描かれ、別人格として認識されています。たった半年余りの間に、自立心が大きく成長したことがわかります。実はこの絵、最初は顔から足が生えているだけで服はありませんでいた。曽祖母のお葬式をきっかけに、自分には体がある!と気づいたようで、あとから描き足したのです。このように、子どもたちは身近な人の死という体験でさえ、成長の材料にしてゆくのですね。


5歳「とり」

〜安心を求める気持ち〜

自由に飛びたい気持ちはあるけれど、安全第一という心境が感じられる一枚。輪郭線をしっかり守る塗り方からもSくんの真面目さが伺えます。保育園の先生がお友だちに怒っている姿を見たことがきっかけで登園を怖がり、しばらくお休みしました。Sくんが安心できるようにゆっくりと過ごしたことで、再び登園できるようになりました。


6歳「鳳凰」

〜パワーの源は家族との時間〜

卒園後の春休み期間中に表現したもの。コロナ禍と重なり、長い休みを家で過ごしていました。先ほどの「とり」との違いは明らか。家族と過ごす時間がSくんのエネルギーを高めているようです。「とり」を囲んでいた枠もはずれ、外の世界へと飛び立つ力強さがみなぎっています。


6歳「1週間」

〜リズムある生活〜

月、火、水、木、金、土、日を表現しました。小学校が始まり、曜日ごとに決まった時間割を過ごすため、曜日感覚が育ったようです。生活リズムを感じていることがわかります。


7歳「あげ玉」

〜思考力が伸びているとき〜

いなり寿司とたまごのセット「あげ玉」はSくんの大好物。いなり寿司は、ちゃんとご飯を揚げでくるんで作っています。リアルな作品からは、観察力や造形力などの考える力が育っていることがわかります。